年忘れ幻想――暗黒エネルギーは“意識活動”?
〈乱気流/最終回/10年12月〉

 時空は無限である、そして無限の時空は、その境界のない領域に無数の無限の時空が存ることを許容している。逆にいえば、無限の時空は、無数の無限の時空によって成り立っている――そう考えていた小生は、ビッグバンと、それに伴って形成される宇宙は無限時空において、たとえばわれわれの宇宙で観測される超新星爆発のようにありふれた現象で、宇宙は無数にあるということを、ずっと以前から文章に著わしてきました。
 最近、宇宙における「暗黒エネルギー」が大きな話題になっています。
 日常の経験では、たとえば打ち上げ花火のように、爆発時に生じた加速は増加することがなく、かつ重力がはたらくので、花火は空中の一点で停止し、燃えかすは地上に落ちてきます。同様に、加速がビッグバンで与えられただけなら、宇宙の膨張は止まり、やがて縮んでしまうはずです。事実、スティーヴン・ホーキングが1983年、宇宙は「大きさが有限で、境界も端もない閉じたユークリッド空間」(説明を単純化しました)だと提案するまでは、宇宙はやがてビッグ・クランチを迎えるという考えが支配的でした。
 そして、1998年にジョンズ・ホプキンス大学の天文学者アダム・リース博士が、宇宙は未だに加速度的に膨脹しているという観測結果を、論文にまとめて発表したのです(第1図)。この論文は大反響を巻き起こし、賛否両論渦巻く中、リース博士の論文を裏付ける研究が次々と発表されました。
 これは、一般人の常識はむろんのこと、今までの宇宙論では説明がつきません。そこで、宇宙の膨張を加速させているパワー、つまり、重力に逆らって物を引き離すエネルギーなので、反重力があるはずだということになり、これが「暗黒エネルギー」と名付けられました。
 さらに、加速を始めたのはビッグバン後70億年ころであること、宇宙の質量の72.6%が暗黒エネルギーであること(アインシュタインの方程式、E=mc2ベースで)、などが分かってきました。ついでに、わたしたちにとって身近な原子や分子から成る物質は、全宇宙の4%しかないことも(第2図)。
 暗黒エネルギーの正体はまだ、まったくわからないのですが、アメリカ・テキサス大学のスティーヴン・ワインバーグ博士は次のように考えているそうです。
 ――(無限時空に)数多くの宇宙が誕生した。その多くは暗黒エネルギーが多すぎたために物質(の素)は拡散して、銀河宇宙を形成できなかった。われわれの宇宙は暗黒エネルギーの量が少なかったために物質は拡散することなく、銀河や地球、そして生命が育まれた。
 そうです、宇宙は「数多く」ではなく、無数に生まれたのです。そして暗黒エネルギーは、生命と関係があるのです。「関係」というより、生命を生命たらしめる「意識」こそが暗黒エネルギーだと小生は思うのです(粘菌ですら、迷路の向こうに置かれた餌に向かって、最短距離を選んでいくというではありませんか。意識こそ生命の根拠であると愚考します)。
 小生は長い間、疑問を抱いてきました。
 意識や思考、感情など、物理的行動以外のわたしたちの生命活動は、何のエネルギーにも依拠していないのだろうか? それらは単なる生命活動の属性であり、生きる過程で体験する喜びや怒りや悲しみ、芸術や科学や社会システムを創り出してきた知性などは、ただ空しく無限時空へ消えてゆくのだろうか? 愛したり、憎んだり、苦しんだり、共感したり、想像したりした結果は、宇宙に何の痕跡も残さないのだろうか? そんなはずはない、なんらかのエネルギーとなって、宇宙活動に影響を与えているはずだ。
 その答が、暗黒エネルギーです。76億年前から突如ふえはじめ、現在もなお増加している暗黒エネルギーを、これまでの物理学から連想される反重力では説明できないでしょう。なぜなら、反重力を生み出す元を説明しなければならないからです。
 そこで、小生が出した結論は、38億年ほど前に誕生した「生命=意識」こそが、宇宙を加速度的に膨脹させることができるエネルギーを供給しているということです。
 すなわち、76億年前ころから宇宙の中に意識が生まれはじめ、38億年前ころに「生命」として結晶した。その後、爆発的に多様化した生命体が行う意識活動は飛躍的に増加かつ進化(高エネルギー化)し、宇宙へ膨大なエネルギーを放射する。その増大するエネルギーによって、宇宙は加速度的に膨脹を続けている(必要なら、生命は地球だけにいるとは限らないという考えを付け加えてもいい)。
 いかがでしょうか? 小生としては超長生きして、暗黒エネルギーの正体を知りたいと思います。将来、「知性」「感情」などの「意識活動」が定量化されうるかどうか見当もつきませんが、本稿を筆者の妄想と読み流していただければ幸いです。


第1図


第2図


(龍門 歩)

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