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本年早々,“死”にまつわる興味深い三つのデータに接しました。
警察庁のまとめによれば,2009年に全国で発生した殺人事件は1097件(未遂等も含む)で,戦後の1946年以来,最も少なかったそうです。小生はとても意外でしたが,みなさんはいかがでしたか? メディアを通じて多くの残忍な事件や不可解な殺人事件の報道に接しているせいか,件数が減ったという実感は乏しいのですが,時代とともに治安や民度が向上したといえるのかもしれません(そのわりには,マナーの悪い人が増殖していますが)。
また,2009年の全国交通事故死者数は4914人で,1952年以来57年ぶりに5000人を下回りました。交通事故による死亡者が1万5000人を超えていた1970年前後に比べると隔世の感があります。自動車保有台数は,1970年は16528521台,2009年は78800542台((財)自動車検査登録情報協会)なのですから,1台当りの死亡事故件数は単純計算で約4.8分の1に減少しています。
そういえば1970年前後は高度経済成長の真っ直中。“神風タクシー”“交通戦争”という言葉が飛び交い,全共闘や労働・住民運動が最高潮に達し,日本社会全体が巨大ハリケーンのように渦巻いていました。
殺人事件と交通事故死の減少とは対照的に,2009年の自殺者は3万2249人で,なんと12年連続で3万人を超えてしまいました。しかも,一家の生活を支える40代,50代の自殺率が非常に高く〔第1図(出所:社会実情データ図録 http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/shushi.html)〕,日本国の経済活動はもちろん,家族,とりわけ子どもへの悪影響は計り知れないものがあります。
自殺予防は諸機関でさまざまな対策が講じられており,それなりの意義や効果もあるのでしょうが,経済は言うに及ばず社会のあらゆる領域がグローバル化した現在,自殺数・率ともに減少への処方箋を見つけることはきわめて困難です。かく言う小生も当然ながら,なんら有効な対策を提案できるわけではありません。ただ,摩(ま)訶(か)迦(か)葉(しよう)が釈迦を称えて述べた偈の中にある次の言葉が,一つのヒントになるのではと思っています。
「自未得度先度他」(じみとくどせんどた)
小生流に解釈すれば,「自分はまだ度(わた)っていなくとも,まず他人を渡そう」という単純な意味です(ご存じのように,「此岸から彼岸へ渡す」という意味にもなり,また「度」という漢字には「濟(すく)う」「菩提心を起こさせる」という義もあります)。
経済・科学至上主義の現代,“宗教的考察”が通用するかどうか甚だ心もとないのですが,心の持ちようが人類社会の根幹であることに疑いの余地はありません。できるだけ多くの人々が「自未得度先度他」の精神を共有し,家庭や学校,職場,友人・知人その他活動の場において地道に実践してゆくことが大切だと思います。その実践が,子どもたちの成長とともに,じわりじわりと人類の在り方を変える処方箋の一つといえるのではないでしょうか。
(龍門 歩)
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