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数学では,解があるかないかわからない問題が「難問」として数学者たちを悩ませるのですから,不思議で,奇妙で,実に面白い世界だと感じます。難問のうちの一つとして知られていた「ポアンカレ予想」ついては,ロシアの数学者グリゴリ・ペレリマンが2006年に証明しました。その功績に対して,数学界最高の栄誉とされるフィールズ賞の授賞が決定したのに,当のご本人は受賞を拒否して行方をくらませたことでセンセーショナルに報道され,一般人も関心を抱いたものでした。
ところで,難問中の最難問とされる「素数」に対する「リーマン予想」への数学者たちの挑戦史が,NHKで放映されました。題して『魔性の難問――リーマン予想・天才たちの闘い』。
小生,不明にして素数の出現が不規則で,永遠に続くなどと想像もしていなかったので,その不規則性と,円周率のように止め処がないことにまずびっくり。で,「規則性」を求めて数学者たちが格闘してきたことも初めて知って2度びっくり。「素数なんて,1とその数自身でしか割り切れない数字のことさ」とタカをくくっていた自分が恥ずかしくなりました。
素数研究者の一人,レオンハルト・オイラーは1735年に写真−1のように素数と円周率の相関性を証明し,宇宙法則と素数の関係を初めて示唆しました。
下って19世紀の半ば,ベルンハルト・リーマンがオイラーの式を,ゼータ関数(写真−2)と名付けた写真−3の式に置き換えて3次元グラフ化し,「ゼロ点」を求めたところ,計算した4点が一直線に並んだのです。そこでリーマンは,「ゼータ関数の非自明なゼロ点はすべて一直線上にあるはずだ」という予想をしました(写真−4)。
この「予想」が,多くの数学者たちの人生まで狂わせる恐怖の難問となり,一時,研究は停滞したのですが,1972年プリンストン大学研究所で,物理学者フリーマン・ダイソンと数学者ヒュー・モンゴメリーが偶然に交わした会話からとんでもないことがわかったのです。すなわち,モンゴメリーが立てた,ゼロ点の間隔を求める式(写真−5)と,原子核の飛び飛びのエネルギーを求める式(写真−6)が非常に似たものであることに,ダイソンが気付いたのです。これはまさしく,素数と,原子核や素粒子といったミクロの世界との関連性を強烈に印象づけるものとなりました。
これを機に,数学者や物理学者たちによる素数に関する研究が再び活発化しました。そして現在では,門外漢の小生に詳しくはわかりませんが,アラン・コンヌという数学者が創始した,空間を不連続とする「非可換幾何学」によって空間に対する新たな展望がもたらされ,「神が設計した宇宙法則」を解読できるのではないかという期待がふくらんでいます。もっとも,欧米の科学者たちはよく「すべての謎が解ける」と「確信」しますが,それは数学や科学に絶対の信を置くばかりに陥る甘い考えです。解けた謎の先に,もっと大きな謎が見えてくるというのが科学史を見れば一目瞭然なので,これで「宇宙の根本法則」が完全に解明されるとはとても思えません。
とはいえ,このところ超弦理論やM理論などで立ち止まった感のある原子核物理学や素粒子物理学論その他さまざまな理論に,なんらかの画期的な知見がもたらされるだろうことは,大いに期待できます。リーマン予想が証明され,非可換幾何学と素数が結びついたとき,どんな宇宙観や素粒子論や理論物理が展開されるのか,とても楽しみです。
もっとも,素数の全容が解明されたら,現在コンピューターで使われている素数による暗号化ができなくなるということですが,それは「量子暗号」で乗り越えられるでしょう。
(写真はすべてNHK番組より)

写真−1

写真−2

写真−3

写真−4

写真−5

写真−6
(龍門 歩)
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