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小生は音楽,特にクラシック音楽が好きで,オーディオ愛好歴も数十年に及んでいますので,セパレートアンプで半世紀余り前に製造された大型スピーカーをドライブし,溜め込んだ数千枚のLPとCDを毎日,就寝時以外は“ながら聴き”も含めればほとんど四六時中聴いています。聴いているというか,音波を身体中で感じているのです。そんな小生は,近年話題になっているネット配信の音楽など,音質面から問題にもしていませんでした。
先般,偶然“フルデジタルアンプ”なる製品をネットで見ることになりました。「デジタル入力の最大50W+50W(4Ω時)アナログ部を無くし,高音質デジタル入出力のみを採用したフルデジタルアンプ」と書いてあります。しかも「デジタルUSB入力が,デジタル出力S/PDIF(OPTICAL,COAXIAL)に変換出力」できるのです。当然,D/Aコンバーター内蔵。ボリュームもトーンコントロールも電子式で音質劣化無し。
メーカーの試聴室でアンプの現物を見て,あまりの小ささにビビッたものの,深みはありませんがボリュームも充分で,とても澄んだ音です。さっそく購入し,わが家の装置に増設。蒸留水のような音色は,残念ながら音楽CDの微妙なニュアンスを表現するには至りません。
そこで,ネットでダウンロードしたJ-POPや歌謡曲を,USB接続でPCから直接,大型スピーカーに接続して聴いてみました。なんと,まったくノイズのないダイレクトなディジタル音,解像度の高いクリアな中高音,そして迫力ある重低音が聴こえるではありませんか! これまでは,PCのサウンドボードを介して外部の小型セパレートアンプにより小型スピーカーをドライブしていたのですが,それとは比べものになりません。
図に乗った小生は,ピアノ演奏によるバッハのクラヴィーア曲をダウンロードしました。聴くと,やはり何かが足りない,二次元的で,ピアノの複雑な音色や演奏家の心を表現し切れていない,そう感じました。それもそのはず,高音質をうたっているとはいえ,けっきょくはAAC(Advanced Audio Coding)によって圧縮された音なので,ポップスなどの単純なボーカルや電子音,小編成のバンド,歌謡曲などでは気付きませんが,要するに元のデータから“不要部分”が,積もった塵の山のように削ぎ落とされていることが歴然とわかるのでした。
やはりネット配信では,器楽曲はおろか交響曲などとても無理だと思ったのですが,なにげなく調べてみると,クラシック音楽を24bit/192kHzという高音質で,しかもDRMフリーで配信するサービスが7月から始まっていました。この音質は,16bit/44.1kHzのCDをはるかに上回っています。さっそくアクセスして、アナログ・テープを24bit/192kHzでディジタル化した曲を、フルデジタルアンプで試聴してみると,たしかにダイナミックレンジが広く,演奏感を伴った,物理的スペックを論じるのが愚かしくなるような品位の高い再生音が小生宅のリスニングルームを満たしました。また,おそらく24bit/192kHzでディジタル録音されたであろう交響曲は,まさにコンサートホールで聴いているようなゆとりあるサウンドが肌に心地よく響きます。
これなら,CDよりネット配信のほうがいいと思いますが,難点もあります。曲は,ダウンロードしたPCに保存しただけでは心もとないので,DVD-Rに焼いて保存しなければなりません(DVDパッケージも販売されています)。PCでDVDに記録し,再生することも可能ですが,高音質を記録・再生するには,おそらく音楽専用のDVD録再プレーヤーが必要でしょう。また,ダウンロードに多少,時間がかかるはずです。しかも,まだコンテンツが少なく,割高な価格設定になっています。とはいえ,音楽専用のDVDプレーヤーも発売されているようですし,多くの人に知られてダウンロード回数も増えてくればコンテンツも増え,価格も下がるはず。時間は,転送速度の向上で解決されるでしょう。
このように考えると,ただでさえ売上げが低迷している現行フォーマットのCDの未来は,明るくないような気がしてきます。小生自身もすでに気持ちが揺らいでいるくらいですから,あるいはCDも,LPのように衰退してゆくのかもしれません。なにしろ音楽好きは,メディアはどうあれ高音質で鑑賞できさえすればいいのですから。さらに,もし現在の圧縮音しか知らない若者たちが真の高音質に目覚めたら,クラシック音楽も息を吹き返す可能性もあり,世界の音楽市場は大きく姿を変えることでしょう。

右上の小さな“RASTEM”がフルデジタルパワーアンプ
(龍門 歩)
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