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世界的な大不況により高速道路や自家用車の使用が控えられている中,日本では(ETC装着車限定で)高速道路料金の大幅値下げが実施されました。それが功を奏して,3月20日は本州四国連絡橋の交通量が前週末に比べて86%増え,東京湾アクアラインも24%増だったということです(2009年3月21日 17時03分/TOKYO Webより)。この傾向が全国的に広がり,世界と連動する経済の活性化に多少なりとも貢献するかどうか,確たる根拠のない施策ですが,ETC関連“特需”に加えて,ガソリンの使用量と,排気ガスの排出量が増えることは間違いありません。また,2万円の定額給付金と相まって,家計の縮小で逼塞状態にある庶民に対する一(いつ)時(とき)のガス抜きにはなるでしょう。
高速道路が大賑わいだったその夜,多摩地区の小さな地下スペースで,映像作家・大木裕之氏の主催する「たまたま祭」というアートイベントが行われ,映像や音響,写真,ペインティング,ジャンルを越えたものなどさまざまなアートが展開されました。
なかでも,自家用車で行楽に興じるファミリーの対極に位置するホームレスな生活を,いわばアートとして発信している市村美佐子氏のトークが印象に残りました。
大学時代からテントで野宿しながら絵を描いていた市村氏は,ホームレスに大きな可能性を見出して2004年から東京の公園でテント生活を始めたそうです。翌年にはテント村の一角に“エノアールカフェ”(絵のあるカフェ)を開店,物々交換で営業開始。そこはやがてホームレスと“一般人”が出会う場所ともなりました。
文明に弾き出されながらも都会のど真ん中で違法に集住し,家庭団らんなどに拒否感を抱きながらもコミュニティをつくり,漂流志向を持ちながらも定住するという,アンチテーゼとしてのテント生活は,人間の尊厳と生命の危機と隣り合わせの日々です。決定的に生産活動に依存し,そのことを自覚しながら文字どおり“からだを張って”アートする市村氏ですが,すでに印税も稼ぐ“著名人”となっていて,小生にいわせればテント生活を送る資格のない人です。それでもなおテント生活を選択しつづけているのは氏の場合,おそらくホームレス支援が主目的ではなく,氏自身にとって居心地のいい場所に在って,アート制作のモチベーションを高めるためでしょう。ならば,それが発信源となってテント村で新たな文化が創造されうるのか? それについて小生は,かつてのウーマンリブやゲイリブが衰退したのと同じ理由で,はなはだ疑問に感じます。それは,強力な排除のパワーが働かなければ,反発するパワーも生じないからです。つまり,もしテント村が受容されたら反発するパワー源がなくなるからです。
といいつつも,あらゆる分野で閉塞状況にある時代に風穴を開ける一つの力になってほしいものだと,生活者として期待しないわけではありません。家計を人質に取られて生産ルートにのっている生活者は,家計をなげうてばルートから外れることもできることを発見するかもしれないし,“売れ筋ランキング”にはいればどんなものでも脚光を浴びる時代,テント村から発信されたアートが既存の制作ルートや流通システムを破壊することができるかもしれません。その他さまざまな可能性があり,それらが収斂して新たな時代への原動力となるかもしれないからです。
 パフォーマンスを演じる市村美佐子氏(写真掲載はご本人の了解を得ています)
(龍門 歩)
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