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昨年は自殺者が33093人に上り,1998年から10年連続で3万人を超えたことが警察庁のまとめでわかりました。過去最悪だった2003年に次いで2番目に多かったということです(図-1参照)。図-2でわかるとおり交通事故死は減少しているのに対し,自殺者数が高止まりしているのは見通しの暗い現実を映しているのかもしれません。
まずは,亡くなった方々のご冥福をお祈りします。
年代別の特徴を見ると,30歳代から50歳代の働き盛りが16909人で約51%と半数を超えました。さまざまな原因があるでしょうが,図-1から読み取れるように,自殺者はバブル崩壊後に急増しているので,経済問題や職場・家庭の人間関係にまつわる深刻な問題が足元に潜んでいることが窺えます。
単一の年代で最も多いのは60歳以上の12107人,約37%。この数はもちろん過去最高で,まるで「後期高齢者医療制度」を予感して死に急いだかのようにすら感じられます。考えてみれば,第二次世界大戦を経て,懸命に働き,経済成長を遂げて現代を築いたのに,財産を持っていなければ邪魔だから早く死ねと国から宣告されたも同然ですから,諾(むべ)なるかなという思いがします。しかも,その子どもに当たる世代(30歳代〜50歳代)の自殺も多いのでは,なんのために汗水垂らして働いたのか? という空虚な徒労感が生じたのかもしれません。
いっぽう自殺手段を見てみると,男性では昭和40年から,女性では昭和55年から,いずれも縊(い)首(しゆ)が50%を超えました。その傾向に大きな変化はありませんが,ここにきて“硫化水素自殺”が相次ぐようになったことはご存じのとおりです。去年は27件(死者29人)だったのに,今年はネットを介して急増し,1月から5月までに489件発生,517人もの死者が出ています。計算上は,1日に3.4人が硫化水素で自殺しているということになります。
ところで,自殺とは一人で首を吊ったり,川や海に飛び込んだり,薬物を飲んだりして,人知れずあの世に逝くことでした。ところが最近は,通勤電車に飛び込んだり,ビルから歩道に飛び降りるなど,大変な結果を引き起こして自殺するケースが多くなりました。なかでも硫化水素自殺は,本人以外を死に至らしめたり,傷害を与えたり,大勢の人を避難させたりと,無関係な人々を巻き込んでしまう確率が高いのです。
自殺自体,非常に傍迷惑ですが,硫化水素自殺はまさに自己中心主義の塊。他人がどうであろうと,自分さえ(らくに)死ねればいいという身勝手な選択をする人間が増えてきている証拠です。これは,ビジネスへと還元する数値化経済の中で,人類社会からヒューマニズムという観点が欠落し,気持ちにゆとりがなくなり,マナーがすたれ,心が荒れ果ててゆくスピードが加速しているからだと思われます。
ほんの一昨年までは,車の中での一酸化炭素中毒(集団)自殺が目立ちました。この方法は,自殺する本人以外を巻き添えにすることはまずありません。山奥の林道から逸れたところに駐まっているミニバンの中で,ひっそりと数人の男女が死んでいたと聞くと,小生は一種の奥ゆかしさを感じます。しかし,どのような手段で自殺しようと,他人を巻き添えにすれば許されぬ犯罪です。万一,巻き添え死が出れば,死刑になりたいとか人生に絶望したからとかいう理由をつけて無差別に人を殺しまくる蛮行となんら変わるところはありません。
自殺について軽々に語ることはできませんが,どうしても自死したいのなら,むかし切腹が一種の儀式であり,それにふさわしい“作法”があったように,現代においては最低限“他人をいっさい巻き添えにしない方法を選ぶ”という“作法”を守るべきだと愚考します。もっとも,自殺を思い詰める段階で,そんなことを考える精神状態にはないのかもしれませんが……

図-1

図-2
(図-1は警察庁統計より筆者が作成,図-2は警察庁ホームページより)
(龍門 歩)
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