歩行者扱いの“電動 車いす”に疑問
〈乱気流No.44/08年4月号〉


 障害者や,足腰の弱った高齢者などが電動 車いすに乗って公道を走っている姿を,最近よく見かけるようになりました。電動 車いすは道路交通法上,歩行者として扱われるそうですが,電動 車いすが歩道から車道側に倒れ込んだという危険なシーンに出くわしたことのある小生は,そのことにちょっと違和感を覚えています。自転車は自動車と同じ扱いになる軽車両なのに,動力が付いている電動 車いすは歩行者ということ自体,合点がいかないのです。
 電動 車いすは四輪以上であるため歩行者よりも幅があり,動きは融通が利きません。動力がついているのに点検義務もないようです。また,最高時速10kmに達する輸入車もある反面、ヘッドライトも方向指示器も装備してないものもあります。そんな“乗り物”が多くなると,今や殺傷能力があるとして厳しい取締りの対象になっている自転車の二の舞になりはしないかと心配です。
 実際,事故も多くなってきました。踏切内で動けなくなった,横断中に車にはねられた,夜,車道を走っていてクルマに追突されたというような事故事例を目にします。平成18年には,交通事故統計に含まれない電動 車いすに係る事故で,わかっているだけでも15人が死傷している(警察庁)ということです。
 このような背景があって,警察庁では平成14年度に「電動車いすの安全利用に関するマニュアル」を作成し,電動 車いす利用者や,他の道路使用者の安全を確保するために必要な事項やマナーをまとめています。これを,電動 車いす指導者や利用者に活用してもらおうというねらいです。逆にいえばこれだけで運転することができるということで,電動 車いすを使うに当たってのハードルは意外に低いのですね。
 しかし,若いときから操作に慣れている人に比べて,年を重ねて体の自由の利かなくなった人や,事故等で歩けなくなった人々が急に使いはじめた場合,やはり“操作能力”は劣るでしょう。しかも,人に危害を加え,あるいは被害者になり,加害者をつくりだしてしまうかもしれないのです。それなのに,マニュアルに依拠するだけでいいというのはどうにも納得できません。交通法規やルールの徹底した教育はもちろん,やはり技能講習を実施して操作能力の向上を図る必要があるのではないでしょうか。必要な人々にとって,行動範囲を広げる便利なツールであるからこそ,安全な乗り方について知恵を出し合うべきだと思うのです。

写真:このような乗り方なら安心ですが。


(龍門 歩)

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