|
このところ,危険な症状を引き起こす高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型によるパンデミック(地球規模の大流行)が世界中で警戒されています。もともとはトリ鳥からトリへ感染するウイルスで,東アジアや中国ではニワトリなどの家禽への大量感染が報告されており,さらにヨーロッパまでその範囲が広がっているということです。
H5N1型ウイルスは感染力が非常に強く,鳥類だけでなく人にも感染します。最近は,人がトリから感染して死亡した例が多数報告されており,WHO(世界保健機関)は,このウイルスが変異して人から人に感染する新型インフルエンザウイルスになる可能性が高いと警告しています。
H5N1型ウイルスが人から人に感染する新型ウイルスへと変異したら,世界中の人類のだれ一人免疫を持たないので爆発的に流行します。東京都新興感染症対策会議では,外来受診者数:約380万人,入院患者数:約29万人,死亡者数:約1万4千人と,驚くべき予測をしており,世界全体では1億5千万人の死者が出るとまでいわれています。
この変異を人為的に阻止することはできませんので,世界各国で,抗インフルエンザウイルス薬(タミフル)の備蓄を行い,新ワクチンの開発を目指しています。ただ,なにしろ未知のウイルスなので,近似的なワクチンをつくるしかないのが実状です。
ところで,アメリカでは2005年に,パンデミックが発生したときのワクチン接種の優先順位を,「1.ワクチン製造者と医師,3.65歳以上の病気を持つ高齢者,最下位は2歳〜64歳の健康な人々」と発表しました。ところが世論の動向を受け,2007年10月には新たな順位付けを発表。「1.ワクチン製造者と医療従事者,2.6カ月〜6歳の乳幼児,3.3歳〜18歳の子供や若者,最下位.高齢の病人」などと変更しました。また日本では厚生労働省が,「1.医療従事者,2.社会機能維持者,3.医学的ハイリスク者」と並べています。さらに抗インフルエンザウイルス薬の使用については,「新型インフルエンザ入院患者,罹患している医療従事者・社会機能維持者,罹患している医学的ハイリスク群,児童,高齢者,一般の外来患者」の順としています。
人命に順位をつけるのはなんとも侘びしいものですが,現実の混乱回避を考えればしかたがないのかもしれません。
なお,バイオテクノロジーの発達した現代では,新型毒素を用いたテロにも気を付けなければなりません。SARSの場合もそうでしたが,未知の毒素が発見されたら,自然由来のものか人工的なものかの分析も必要です。
人類をめぐる環境はいろいろな意味でいっそう複雑化,困難化している現状が,重くのしかかります。
(龍門 歩)
注:表は「新型インフルエンザ対策行動計画」の概要について/厚生労働省/平成17年11月http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html#2-1より

|