競技練習の自転車激突死
〈乱気流No.36/07年8月号〉


〔7月19日午後1時50分ごろ,千葉市の市道で,自転車競技の練習中の工業高校3年生二人の自転車が,違法駐車車両に激突して亡くなるという事故があった。二人は自転車競技の県代表として全国高校総体に出場予定だった。同校の田辺義博教頭は「練習場所の確保が難しく,公道での練習はやむを得ない」と話した。〕(毎日新聞 2007年7月19日 22時02分 参照)
 プロの競輪選手がNNN Newsで,「全力で自転車を漕ぐと顔はうつむき,2メートルほど先しか見えない」と言っていました。激突した状況から,この二人も全力で走っており,前方を見る余裕はなかったにちがいありません。
 基本的には駐車違反を犯していた運転手が悪いとは思いますが,公道でこんな危険な練習をするのはいかがなものでしょう? 立場を替えて考えてみれば,彼らは加害者になっていた可能性もあります。たとえば,歩行者をはねていたかもしれないし,前を走るママチャリに追突していたかもしれないのです。この速度だったら,ぶつけられた人は生きていられなかったでしょう。
 それなのに,教頭の「公道での練習はやむを得ない」という発言。これはとうてい見過ごすことのできない暴言だといわざるをえません。反省の気持ちは毛頭なく,むしろ「高校総体」という大義名分を盾に,危険運転を継続する意思を表明しています。練習する生徒や,ひいては関係のない人々の生命に思いを致す気配すらありません。しかも,そのことを教頭本人が意識していないという事実にも,背筋が寒くなる思いです。
 もともと,おそらくほとんどの高校で練習場所を確保できないことを承知で,高校総体において自転車競技が行われること自体,不条理でおかしな話です。「高等学校生徒に広くスポーツ実践の機会を与え,技能の向上とスポーツ精神の高揚を図り,心身ともに健全な高等学校生徒を育成するとともに,高等学校生徒相互の親睦を図ろうとする」(平成19年度 全国高等学校総合体育大会 公式サイトより)趣旨にも反しているのではないでしょうか。今後,このような無理な競技をやめるよう,主催者や,後援者の文部科学省等に強く求めたいと思います。

(龍門 歩)

不確定性文学研究室トップへ