|
新幹線の橋脚を免震構造に 《乱気流No.3/04.11月号》 |
||
今年の6月〜10月は,台風の上陸数が過去最高の10個となり,日本各地に大きな被害をもたらしました。また夏には,東京・大阪・京都などにおいて真夏日の連続日数や通算日数記録,東京では最高気温の記録が更新されるなど,自然が容赦なく猛威を振るいました。 そして,台風23号の被害に追い打ちを掛けるように10月23日夕方,震度6強を3回も記録し,なお強い余震を起こしつづけている新潟県中越地震が発生。家屋・建物の倒壊,山や崖の崩落,鉄道・道路の寸断,ライフラインの停止等々,甚大な被害をもたらしました。26日現在,死者は計26人に上り,負傷者は二千数百人,避難者は10万人超となっています。被害に遭われた方々に,心よりお見舞い申し上げます。 これから寒さがつのり,長期間のうちには雨や強風,やがては降雪と,さまざまな厳しい気象条件も襲ってくるので,水や食料の補給はもちろん,仮設住宅の建設など,関係各機関の迅速な救済策を希望します。 ところで,この地震によって上越新幹線が脱線しました。いくつかの幸運もあって転覆しないで済み,乗客乗員に一人の負傷者も出なかったことはほんとうに幸いでした。とはいえ,傷ついて傾いた車両や,900mにわたって外れて曲がりくねったレール,橋脚のコンクリートが剥落して,破断した鉄筋が剥き出しになっている写真などを見ると,その衝撃の激しさに慄然としないではいられません。 営業開始以来初めて新幹線が脱線したことで,JR関係者や専門家たちは大きなショックを受けたようで,さっそく原因究明に乗り出しました。ただ,曽根悟工学院大学教授(交通システム工学)は「直下型で,阪神大震災を上回る1000ガル規模の揺れがあった。あれだけ上下に大きな力が加われば,脱線が起こってもおかしくない」と述べており,また永瀬和彦金沢工業大学教授(鉄道システム工学)も「震度6程度までの地震で列車が脱線した例はなく,今回は震度7以上に匹敵する力が働いたのではないか」と語っているように(いずれも日本経済新聞,10月25日付夕刊),鉄道がかつて経験したことのない事態に直面していることはたしかでしょう。 新幹線には数々の安全対策が施されています。レール幅が在来線より36.8cmも広い143.5cmで横揺れや遠心力に対して強い,曲率半径も大きい,安定した高速を出すために車軸ごとにモーターが付いている,信号機の見落としや見誤りを防ぐため,運転席にランプで信号を表示,万一このランプを見落としても列車を自動的に止めるATC装置ほか――。 そして地震に対しては,地震動早期検知警報システムが導入されています(各新幹線,および東海道・山陽新幹線近傍の在来線,営団地下鉄に同様の装置が導入されているそうです)。いずれも各地にセンサーを設置し,地震が発生したら,速く伝播するP 波初動で検知して地震規模などを計算。S波が来る前に列車への送電を止め,同時に非常ブレーキで停車させるというシステムです。 ところが上越新幹線の脱線は,このシステムが直下型地震には無力であることをさらけだしてしまいました。もともと,時速270kmで走っている新幹線が,非常ブレーキを掛けてから停止するまで90秒もかかります。しかも,時速200kmで走行中脱線して,コンクリート台座などから強い抵抗を受けた上越新幹線が1.6kmも走ったことを考えれば,現状では実効性に乏しいシステムだと思われてきます。 このような現実に対して,前出の永瀬教授は「高架橋の強化対策などを継続すべきだ」と語り,曽根教授は「脱線防止用のガードレールを正規のレールの内側などにつけるのも一つの対策」と述べています(日本経済新聞,10月25日付夕刊)。しかし,これらも,大地と路盤とレールと車両の物理的関係を根本的に変えるものではありません。 ここはまったくの素人考えなのですが,最近ビルディングなどに多用されている「免震構造」を,新幹線の橋脚部分に応用したらいかがでしょう? 「剛」にのみ頼る発想を変えて,「柔」を利用するのです。そうすれば揺れそのものを吸収することができ,地震動早期検知警報システムとの併用によって,脱線転覆の危険性も大幅に減るのではないでしょうか。もっとも,何万本,あるいはそれ以上もあるであろう橋脚全部を改修するには,費用も時間も膨大になりますし,高架以外やトンネルなどには役に立たないという側面はありますが,人命と産業へのダメージを最小限に抑えるために,ぜひ研究してほしいと思います。 ちなみに,首都高速道路を免震橋脚にすれば,東京直下型地震で予想される災害規模を,劇的に縮小できるかもしれません。 |
||