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職業運転手 《乱気流No.2/04.10月号》 |
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「もっとギヤチェンジの勉強をしたら」 「なにっ!」 「ギクシャクするから,お金,落としちゃったじゃないか」 ある日の夜,酔っぱらっていたから言葉にすることができたのでしょうが,小生はタクシー運転手にこんなクレームを付けました。ギヤチェンジをするたびに車体がガクンガクンと揺れ,タクシー代を出そうと開いた財布から小銭がフロアに散らばったのです。プライドを傷つけられたドライバーは怒りの反応を示したわけですが,幸い,それ以上反応することなく黙って料金を受け取りました。切れやすいドライバーだったら,ただじゃ済まなかったかもしれません。 路線バスの運転手にも,ギヤチェンジの上手なドライバーと下手なドライバーがいます。バスは車体が大きく,振動も激しいうえ,立っている乗客もあることなので,運転の上手下手の影響はタクシーよりはるかに大きいものがあります。 路線バスの運転手は,ある意味「ドライバーのエリート」だと,小生などは尊敬しているのです。大きな車体をミリ単位で操り,たくさんの人命を預かる人々なのですから,テクニックもマナーも抜群のはず。 現に,発進から停車までまったくショックを感じさせない素晴らしいドライバーに乗り合わせたことがあり,小生は降車ぎわ,おもわず「運転がお上手ですね」と声を掛けてしまいました。 そんな心遣いと,神業に近いテクニックの持ち主は例外としても,毎日,運転していれば乗客が心地よく乗ってるか,悪い乗り心地をがまんしているかくらいわかりそうなものです。にもかかわらず,無造作にガックンとクラッチをつないだり,エンジン音や排気音もうるさいセカンドギヤで走行を続ける運転手も少なくありません。停車場の間隔が短いので運転手の気持ちもわからないではありませんが,セカンドギヤはエンジンブレーキの効きが強いため,ちょっとしたアクセルワークでも前後動が大きく,乗客の体は激しく揺さぶられてしまいます。なにが公共交通だ,なにを考えて料金を取っているんだ? と言いたくなるというもの。 バス会社は,運転の仕方を指導しないのでしょうか? 乗客へのサービスの基本であり,騒音や燃費,大気汚染にも係わることなのに。その点,タクシーはもろに不況と競争に晒されているので,運転手のマナーも改善されたようです(もっとも,ほとんど乗ることはありませんが)。 また,電車でも運転手の上手下手が見られます。これは,鉄道会社による「伝統」もあるようです。東京のある私鉄は,どの運転手もブレーキの掛け方が乱暴です。小生は,その私鉄沿線に住んでなくてよかったと思うほど。 しかし,このような事情も変わりつつあります。タクシーはほとんどオートマチック車になり,バスもショートストロークのチェンジレバーもしくはオートマチック車になりつつあります。電車の性能もよくなり,加速や減速も非常にスムーズになってきました。コンピューター制御技術などの発達によって,運転手のテクニックに負うところが少なくなってきたわけです。この流れは,いっそう加速してゆくことでしょう。 テクノロジーが発達し,多くの面で生身の技を発揮する場が少なくなってきました。その分,個人差が小さくなり,いろんな意味で均質化されます。そのこと自体は,たとえば身体に障害を持つ人が自動車を運転できるようになるなど,いろいろな人にさまざまな可能性を提供することにもなり,悪いとは思いません。しかし気を付けなければ,「基礎」や「努力」「向上心」「好奇心」,さらには「感動」や「達成感」などを忘れてしまいます。どのような時代が来ようとも,「最初」と「最後」は人間であることを肝に銘じておきたいものです。 |
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